きものサロン かどいせ(有瀧 久雄 さん)
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きものサロン かどいせ(有瀧 久雄 さん)
住所:古河市中央町1-10-38 電話:0280-22-0133 FAX:0280-22-6970
定休日:水曜日
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ご商売について簡単に教えてください。
呉服販売:和服に関係する商品の販売をしています。
私で九代目になるのですが、実は、この古河の地での創業は1735年(享保19年)頃からで、当時は呉服屋ではなく、関西の産物を販売する伊勢商人としてのスタートでした。
その後、江戸後期の五代目から呉服専業に変更し、今に至っています。礼装用の「きもの・帯=黒留袖・訪問着・振袖・喪服 等」からカジュアルな着物「紬・小紋・ゆかた 等」更に和装小物類まで、豊富に取り扱っています。
特に「成人式の振袖」は年間商品として主力になっていますので、販売やレンタルにいつでも楽しく選んでいただけるように、展示場(250畳)には常備400枚から500枚のお振袖が展示してあります。
また、豊富な商品知識と商品量でTPOに合わせた着物のご提案からなるコーディネートなどもご提案させて頂いています。
ご商売へのこだわりや工夫は何ですか?
「自利利他」と「不易流行」を社是として、皆様のお役に立てることを目標に日々励んでいます。
勿論きもの専門店として、きちんとした、商品を適正価格で販売できるように、また、伝統的な染め等の知識等を知った上での商品説明・アドバイス等を心掛けており、商品の仕入れ、構成などもそれを基本にしています。
今は、着物の販売ひとつとっても、様々な商売のやり方があり、私どもの商売や業界にも様々な影響を及ぼす事もあります。
混沌とも言える状態でもあるからこそ、この地で古くから商売をして来た者としてぶれない・しっかりとした志で仕事をさせて頂いております。
また、地域の皆さんと一緒に「着物ライフ」が楽しめる様に、イベント等を通して弊店だけでなく、良い意味で周りを巻き込んで盛り上げられたらと、相談や提案をさせていただいております。
その他こだわりとして、今のメイン商品である「成人式の振袖」についてですが、弊店では、振袖のレンタルのパッケージとして、「プロカメラマンによる前撮り撮影」をサービスさせて頂いているのですが、その際のコーディネートでは、お客様に最高の記録(写真)、そして思い出が残せる様、心掛けて提供させて頂いております。
前撮りは、成人式当日は、早朝の着付けやメイクから始まり、式への出席等、とても忙しいので、その時期を避け、時間に余裕を持って撮影しています。
振袖は幾重もの布を纏う事になるので、どんなにエアコンをかけても夏は暑くて撮影が困難になる為、夏を避けた春秋に調整して行っています。
この時のコーディネートこそ、それぞれのお店のセンス、個性が出るところであると、私は考えております。
まず、お客様には好きな振袖を選んで頂くのですが、その振袖をベースに、雰囲気として、シックにまとめたいか、モダンにまとめたいか、新古典にまとめたいか等、方向性を決めて頂きます。
その上で様々な小物を使ってまとめていくのです。
御存知の方もいらっしゃると思いますが、人はそれぞれ肌、髪、瞳、頬、唇の色が違っており、その方に合う色というものが存在します。
現代では「パーソナルカラー」等とも言われ、それぞれ人に合った色をコーディネートする資格等もある様ですが、正にそれの「振袖コーディネート版」ということです。
顔の一番近くにある重ね着の色や、帯揚げ、帯締めのコーディネートで、お客様の個性をより活かしていくのです。
なかなか文章だけではお伝えしにくいのですが、まとめ方でお客様の雰囲気はかなり変わって来ます。長きに渡りこの商売一筋でやって来たからこそ、様々な提案が出来ますし、私の経験に裏打ちされたものでもあります。
大人になった門出を祝う素敵な儀式であり、着物の世界を体験出来る貴重な時でもありますので、お客様にはこのコーディネートも楽しみつつ、素敵な記録(写真)を残して頂きたいと願っています。
ご商売の魅力とはなんですか?
やはり仕事を通して、お客様(例えば、コーディネートしたお嬢さん)に感謝された時ですね。
商売をしているから「(着物という)高いものが売れて嬉しい」等という単純な事ではなく、日本の伝統文化の一翼を担いつつ、その美を纏って感謝されるのですから、これほど嬉しい事はありません。
それと、やはり着物、特に振袖は鮮やかで素敵な色が多く、和の美に触れられる事はとても素敵な環境でもあると思っています。
仕事をしている私だけでなく、より多くの人にこの美しさを楽しんで頂きたいと思っています。
おすすめの商品やサービスについて教えてください。
弊店で着物を購入されたお客様には、アフターサービスとして、
着付けを無料でサービスさせていただき、着物を楽しむお手伝いをさせて頂いております。
振袖のレンタルをご利用の場合、選ぶ時の試着の回数に制限もございませんので、沢山の美しい振袖の中から好きなものを選ぶ楽しみを楽しんで頂けます。
この機会に、和の美に触れ、感じてみてください。
また年2回程開催している展示会では、様々な着物の現場で活躍されている先生をお迎えし、染めの技法等から始まる様々な着物の知識を教えてもらえるので、着物を感じ、学ぶ事の出来る良い機会として、おすすめです。是非足をお運びください。
夢や展望をおきかせください。
夢という表現が正しいのかはわかりませんが、接客、営業と、お仕事をする際に、常に着物を着て接客したいと考えています。(出来る様になる事が夢です)
どうしても日々の業務では移動や体を動かす事が多く、効率等の都合上、着物を着て仕事をする時間はどうしても少なくなってしまうのです。昔と違い、今の社会はスピードや移動距離等、「効率」の要素がどうしても求められてしまうというのも理由の一つで、なんとも複雑な気持ちでもあります。
また、お客様に対しては、振袖をレンタルし、写真だけ残すのではなく、その成人式の振袖を着た事をきっかけに、着物を持って頂き、着物の良さを知り、着物を着る生活を楽しんでもらえたらいいなと思っています。
着物はちゃんと手入れしていれば、世代を越えて楽しめます。
それらも含め、着物を着る文化、風習が広まってくれればと、呉服屋であるからというだけでなく、日本人であるがゆえに願っています。
趣味は何ですか?
月に一回、ゴルフを楽しんでいます。その他には絵画鑑賞や読書です。
休みの時に見に行ける絵画の展覧会等がある時は、出来るだけ行って楽しんでいます。
絵画から得られる色や表現の感覚は、刺激や勉強にもなっています。
読書は乱読と言いますか、小説などを本屋に行っては、漫画感覚で買って読んでいます。
編集後記
今回のインタビューは、角伊勢さん。
前述しましたが、何と!1735年(享保19年)頃から、古河で商いを続けている老舗中の老舗です。
最初は呉服屋さんではなく、五代目から呉服業に切り替えたとの事ですが、それでも江戸時代。
その時の長さに、ただただ驚かされます。
取材に伺うと、お店にはとても広い展示場があり、さらにそこに並んだ美しい振袖に、心躍らされました。
「着物は高い」、「着るのが大変」…様々な理由がありますが、取材をしていくうちに、「何より社会がスピードや効率を求めてしまった事に、日本人の着物離れが起因しているのではないか?」と考える様になってしまいました。
戦争や経済成長を経て、めまぐるしいスピードで、今もなお変化し続けている社会。
その社会の成長、進歩の中には、「すぐに」や「お手軽に」や「何時でも何処でも」といったキーワードが込められています。
今はデジカメで撮影したら、すぐにカメラの画面で撮影した画像を楽しむ事が出来ますが、昔はカメラで撮影した後、「写真屋さんに頼んでフィルムを現像」しないと、写真として手に取る事も、見て楽しむ事も出来ませんでした。
カップラーメンも、発売当初、街中に販売機が設置され、「すぐに出来上がり、歩きながら食べられる」という新しいスタイルの提案と共に大ヒットし、そして今も売れ続けています。
道路や線路、そこを走る車両(車、電車)というインフラも整備され続け、短い時間でどんどんどんどん遠くに移動出来る様になりました。その様に、社会全体で求められるスピードや効率のレベルの高まりは今も留まる事を知らず、高きを望まれています。
すると当然、出掛ける時の身支度にかかる時間は短い方が良しとされ、着替える効率も高い方が良しとされ、そしてお手軽にいろいろな服に着替えられて楽しめる事も良しとされてしまいます。
「ファストファッション」という言葉の通り、さっと身支度を整え、簡単に楽しめる洋服が求められ、支持されていく事は、自然な流れでもあります。
有瀧さんが仕事で着物を着る機会が減ってしまったのも、これらに起因しているとも言えます。
想像してみてください。時代劇のワンシーンでもいいです。
呉服屋さんとして商売を始められた江戸時代、お店の外はどうだったでしょう?
今の様に時速数十Kmで移動するモノ(車)があったでしょうか?いいえありません。
着物しか着るものがなかった時代、それは社会全体がそのスピードで動いていた時代だったのです。
「速くても馬」という時代だからこそ、着物でよかったのです。
今では「遠いと感じられない距離」への移動の時も、「出掛ける為」にそれなりの時間をかけて準備する、そういうスピードの社会だったのです。
ところが、今は、移動する力、移動させる力の効率化が求められた反動で、呉服屋さんという商売で扱っている着物という商品と、そのお店がある社会とで、それらに流れる時間に大きな差が出来てしまっています。
今でこそ、海外から日本という国が注目され始めてはいるのですが、実はその豊な国民性を育む要素の一つは、この日本文化に流れる時間の早さなのかもしれません。
歌舞伎や雅楽の台詞や舞いのテンポが早くないのも、日本文化のスピードがそれであったからなのかもしれません。
「大人になったのだから、その儀の為に振袖(着物)を着ようよ」…ではなくて、「大人になったのだから、本来の日本の時を刻むスピードを、着物を纏う事によって感じようよ」…という考え方、いかがでしょう?
また、日本には、多くの「色の名前」が存在しているのを御存知でしょうか?
赤いから「赤」と、乱暴にひとくくりにする事なく、それぞれの微妙な違いを名が付けられています。
日本文化の繊細さの一つを表していると思います。
そして、その繊細で美しい色を楽しめるものの一つが、着物の、振袖の世界でもあります。
展示場の中に、まるで絵画作品の様に大きく拡げられ、並べられた振袖を見れば、その和の世界を感じる事が出来ます。
今の生活ではあまり触れる事のない和の美の世界が視界いっぱいに広がり、感じた事で生まれる心の動きは、美しいものを見た時の独特のものです。
その心の動きが、日本文化を感じる事なのではないでしょうか?
オリンピック開催国にも決定し、様々なメディアでも取り上げられている、海外の方から注目されている「日本人」。
残念な事に自国の文化や歴史をあまり知らない国民という側面も持ってしまってもいます。
進化、発展を続ける事は決して悪い事ではありませんが、「結果」や「その先」にばかり注目せず、
「経過」や「そのもの」を注目し、楽しむ事で日本を改めて感じる事ができるのかもしれません。
大人になる皆さん、(もう大人になっている皆さん)どことなくスピーディに過ぎていった20年間であったかもしれませんが、振袖を皮切りに着物を纏い、日本の時間に包まれる事を楽しんでみると、そこには日本人としての素敵な人生が待っているかもしれませんよ。
「そうだなぁ…着られるのなら着てみようかなぁ…」
という気持ちに少しでもなったとしたら、まさにそれが第一歩です。
角伊勢さんが五代目で呉服屋さんとしてスタートされた時、下妻の呉服屋さん、角藤(かどふじ)より嫁がれた奥様は、なんと古河城の奥女中として勤められたそうです。
また、今では古河のイベントに欠かせない存在になっている「華むすめ」さん達の着付けをお手伝い(華むすめさんが着物を着てイベントに出る前は、角伊勢さんで着付けをして行く)をされていたりと、商売を通して、角伊勢さんは今も古河と深い関わりを持たれています。
その様にいろいろなお話をされながら店内を案内して頂いていると、「こういう面白いものもあるんですよ」と、見せてくださったのは「蘇州刺繍」という、表裏どちらから側からも見る事の出来る、とても繊細で美しい両面刺繍のついたて。(写真左)
「こういうものを見に遊びに来てくれるといいんですけどねぇ」と優しくおっしゃいました。
わかります?向こう側が透けて、有瀧さんの手が見えるのが。
とても繊細でしたよぉ~。(初めて見て興奮気味)
街の中にも、まだまだ凄くて素敵な場所(お店)あることを改めて感じさせていただいた今回のインタビューでした。
ワタシも着物着たいなー…
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