2008.06.26
古河の昔ばなし 【きつねソバ2】 by もも子 [昔ばなし]
「おかげさまで嫁も孫もたすかりました。どうぞ、ごっつおうをたべて、ゆっくりしてってくだっせ」
たたみに頭をこするつける、ばあさんに、医者どんは首をふった。
「いやいや、医者のつとめです。そろそろ夜も明けるころだから、早く帰んねえと、患者さんがまってますからな」
ずいぶんとおくまできてしまったと、医者どんは気が気でない。そわそわと、帰りじたくをはじめた。「そんじゃあ、ソバかウドンでも、いっぱい、たべてってくだせえ。腹のたしになんべからね。そこまでひきとめられては、ことわることもできず、医者どんと車夫は、ソバをごちそうになった。
いままでたべたことないような、うまいソバに、二人は舌づつみをうって、つゆまでのんでしまったと。
お礼の金をもらい、やっと帰ることになった。
門の前においた人力車まできたときだ。そこらじゅうにさげてあったちょうちんがスッと、一つ消え、二つ消え、みるまにぜんぶ消えてしまった。
あたりはまっくらやみの森の中だ。近くで、なにものかがごそごそうごきまわるし、ふくろうはなくし、医者どんと車夫は、へたへたとこしをぬかしてしまった。
それからしばらくして、しらじらと夜が明けてきた。
二人の前にはどんぶりがおいてあった。どんぶりのなかには、ミミズが二、三びきはいっている。おおきなお屋敷はどこにもなかった。
医者どんと車夫がたべたソバは、ほんとうは、ミミズだったんだ。
もらったお金も、ぜんぶ木の葉っぱにかわっていた。
そこはきつね森といってな、たくさんのきつねがすみついていたところだった。腹をたてる車夫に、医者どんは、
「人もきつねも、病人にかわりはない。たすけてらった礼に、せいいっぱいごっつおうをしたんだろうよ」
そう、なぐさめたんだと。
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