May 2008

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2008.05.21

おいてけおいてけの化けいちょう【2】 by もも子 [クチコミ情報]

そんなある日、うわさをきいたほかの魚屋が、夕方、魚をいれた盤台の上に大きなおもしをのせて、ちょうの木の下を通ってみた。

「おいてけ、おいてけ」
「ほうら、きなすった。おれはまえの魚屋のようなまぬけじゃないぞ。だいじな魚を食われてたまるものか」
そういうと魚屋は、いちもくさんに、ちょうの木の下をかけぬけた。
けれども、横町の魚屋にきて、盤台のふたをとってみると、魚は骨だけになっていた。
「あのちょうの木があやしい。あそこにくると、「おいてけ、おいてけ」と声がする。あれは、まものだ。ばけいちょうだ」
ばけいちょうのうわさは、たちまち町中にひろがった。町中のうわさをきいたお城では、さっそく、おふれをだした。
「ばけいちょうを切りたおすことのできる者は、なのりでよ」
そこで、町の名だたるきこりがさっそくなのりでて、ちょうの木はきりたおされることになった。
木こりは、ヨイショヨイショと、朝早くから夕方まで、のこぎりをひいた。きってもきっても、なかなか、はかがいかないが、それでも、やっと、夕方になって、切りたおすことができた。
ところが、その晩、お役目をはたして、家にかえりついたとたん、木こりはたいへんな熱をだして、とうとう明けがた近く、死んでしまった。
ふしぎなことに、木こりが死ぬとどうじに、切りたおされたいちょうの木が、もとどおり、くっついてしまった。
お城では、また、おふれをだした。
「ばけいちょうを切りたおすことのできる者は、名のりでよ」
もう、町中のだれも名のりでるものはなかったが、栃木のほうの、昔はお侍だったという木こりが、やってきた。
強そうな木こりが、のこぎりで、ばけいちょうの木を切りはじめた。
一日中かかって、ようやくいちょうの木は切りたおされた。
ところが、ごちそうをたらふく食べて帰ったとたん、木こりは、その晩から熱がでた。三日三晩熱が続いたあげく、とうとう死んでしまった。
きりたおされたはずのいちょうの木は、やっぱりもとにもどっていた。
お城は、おふれをだした。
「ばけいちょうを切りたおすことのできる者は、名のりでよ」
二人もの人間が死んでしまったのだから、もう、ばけいちょうを切りたおそうとするものはいないと思ったのに、三人目が名のりでた。馬車ひきのおじやんだった。
みんなが心配して見守るなか、大なたで、ポンポンポン、いちょうの木をぶったぎりはじめた。半分くらい切ったときだった。急に腹をおさえてすわりこんだ。
「あっ、いてえ、いてえ」
もう、木をきるどころではない。おおなたをほっぽりなげて、家にかえってしまった。すると、とびちっていた木っぱが、みんなおさまって、いちょうの木は、もとにもどってしまった。
それからというものは、お城で、おふれをだしても、だれも名のりでるものはいなかったそうだ。魚屋は、二度と、いちょうの木の下を通らなかったから、そのあとも「おいてけ、おいてけ」の声がしたかどうかは、たしかめようがなかったと。

☆古河に限らず、その土地土地には昔から言い伝えられた話があるようです・・・

☆古河の昔話、他にもおもしろい話があるので、いくつか紹介していきますネ!





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