2008.05.19
おいてけおいてけの化けいちょう【1】 by もも子 [クチコミ情報]
古河には古くから伝わる昔話があり、古河歴史博物館にて読むことが出来ます。
全16話が収められているそうです。
古河歴史博物館では、その中から、祭・昔話・歴史等のビデオ鑑賞が出来でき、(入館料のみで鑑賞できるそうです。)また、小中高生については、毎週土曜日は無料だそうす。
古河歴史博物館の楽しみ方が、展示品だけでなく、そんなところにもあったなんて知らなかったわ!!
その中からひとつ紹介しま〜す。
おいてけおいてけの化けいちょう@
白壁町と梅屋敷の十文字のところに、小さなほこらがあり、そのわきに、大きないちょうの木があった。
ある日の夕方のこと、魚屋が、一本の橋を渡って、いちょうの木のあたりを通りかかった。渡良瀬川からとってきた魚を盤台にいれて、それを天びんぼうでかついで、ゆさゆさ、やってきた。
「すっかりおそくなってしまった。日のくれないうち横町の川魚屋にいかないと。あそこの店は、いきのいい魚を早く持ってこいと、うるさいからなあ」
それ、ヨイショ、ヨイショ。魚屋は、ひょうしをとりながら、足をはやめた。
すると、
「おいてけ、おいてけ」
という声がした。
「はて、だれだろう。おれに用かい?」
くびをぐるりとまわしてみましたが、だれもいない。
また一歩、歩き出すと、やっぱり、「おいてけ、おいてけ」と声がする。
魚屋は天びんぼうをおろして、声の主をさがした。
小さなほこらのわきに、大きないちょうの木が立っていたが、だれもかくれている様子はない。
「おいてけ、おいてけ」
「いったいぜんたい、どこのどいつだ。てめえらに、なにをおいていくもんか」
「おいてけ、おいてけ」
「すがたもみせねえで、しゃべっていやがるのは、どこのどいつだ」
魚屋は、声だけきこえる相手にどなりちらしたが、だんだんうすきみわるくなってきた。
「そらよっ」
魚屋は、天びんぼうをかついで、大いそぎで、ちょうの木の下をはなれた。
すると、こんどは、「ピチャピチャ」という音が聞こえはじめた。
その音は、どうやら、ぴっちりふたをしたうしろの盤台の中から聞こえる。その音は、ちょうど猫が魚を食っているような音だが、ちゃあんと盤台のふたはしまっているし、きちんとひもでくくってある。
「なんにもかわったことはない。」
魚屋は、こんちくしょうといいながら、先をいそいだ。
おやしき町に入るころになると、なんだか後の方がかるくなって、前の方に天びんぼうがおっこってしまった。
おかしいなと、首をふりふり、中心をずらして天びんぼうをかつぎなおした。
すると、こんどは、前の盤台のなかから、「ピチャピチャ」と音が聞こえてきた。
目の前の盤台は別にかわったことはない。ときどき、立ちどまって、ゆさゆさ、ゆさぶってみるが、わからない。
魚屋は、すっかり、おそろしくなって、とっととっとと先をいそいで、ようやく、横町の川魚屋にとびこんだ。
ひもをほどいて盤台のふたをとって、あっとおどろいた。
中の魚はほとんどくわれていて、骨だけがのこっていた。
食ったのは、ねこでもむじなでもないのは、はっきりしていた。
「こりゃ、まもののしわざだ。」
魚屋と川魚屋は、どうじにさけんだ。
次回は おいてけおいてけの化けいちょう【2】をお届けします。
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